循環器の病気
洞不全症候群
どうふぜんしょうこうぐん
Sick sinus syndrome
初診に適した診療科目:循環器科 内科
分類:循環器の病気 > 不整脈(脈の乱れる病気)
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どんな病気か
洞不全症候群とは、主に洞結節(右心房の壁と上大静脈の境にある三日月状のもの)のはたらきが低下することによって脈が遅くなり、そのために脳、心臓、腎臓などの臓器の機能不全が現れる病気です。
心電図的には以下のように3つの群に分類されます(図23‐A、B、F)。
1群:原因不明の持続性洞徐脈(50拍/分以下)
2群:洞停止または洞房ブロック
3群:徐脈頻脈症候群(後述)
いずれにしろ、心臓から送り出される血液量の低下によって主要臓器の循環障害が起こる症候群です。心電図上で、心房興奮を反映するP波が規則正しい間隔で現れる数が少ないものを洞徐脈、P波が突然現れなくなる場合を洞停止(あるいは洞房ブロック)といいます。
原因は何か
洞結節の刺激を生み出す能力の低下、あるいは洞結節→心房間伝導の障害が原因です。虚血性心疾患、心筋症、心筋炎、リウマチ性心疾患、膠原病などに合併しやすいと考えられていますが、90%以上は原因が特定できません。機能的なものでは、洞結節の刺激の発生数を低下させる迷走神経の緊張亢進、高カリウム血症、薬剤投与(β遮断薬、ジギタリス)、抗不整脈薬などによるものがあります。
症状の現れ方
通常、心臓は1分間に60〜100回ほど脈を打ちますが、脈拍数は本人のおかれた状況に大きく左右されます。洞不全症候群では運動、発熱時などにも相応の心臓拍動数の上昇がみられません。また、突然脈が止まってしばらく心臓が活動しなくなるタイプもあります。
主要臓器の脳には虚血症状が出やすく、めまい、立ちくらみ、ろれつが回らない、失神しそうになる、失神などがあります。その他、うっ血性心不全、狭心症、全身の倦怠感、乏尿なども起こりえます。
検査と診断
心電図上で、心房の興奮によって生ずる波(P波)の出現が少なくなります。心房が興奮しないと電気刺激が心室に伝わらないため、心室興奮を表す心電図上の波(QRS波)も減ります。P波の発生が極端に少ないと、洞結節以外の場所にある刺激中枢から自然に刺激が発生します。この時の心臓の電気的活動を補充調律といいます。
ただし、長期に長距離走などの激しいトレーニングを積んできた人では、心拍数が40/分以下であってもまったく無症状のことがあります。心電図上で徐脈があり、その時に一致して脳の虚血症状などの存在が明らかになれば、洞不全症候群の診断は確定します。
治療の方法
洞結節の自発的興奮の回数を増やす薬を使います。抗コリン薬(硫酸アトロピン)、β刺激薬(イソプロテレノール)などの経口薬や静注薬です。徐脈が薬にあまり反応しなかったり、薬を中断すると症状が悪化するような場合には、ペースメーカーの適応になります(コラム)。
病気に気づいたらどうする
まず、脳の虚血症状を自覚したら、失神した時に頭部を打撲するのを防ぐために横になって(あるいはしゃがんで)ください。できれば脈の数を数えてください。
症状が長引く場合は、すぐに病院を受診して心電図などの検査を受けます。また、繰り返すような場合には、循環器専門医の診察を受けてください。
ペースメーカー
ペースメーカーは、電池・心拍の感知部品・電気刺激生成部品からなる本体と、心臓と本体を結びつける電線部分(リード)とから構成されます。徐脈が現れた時のみ心臓を刺激することによって心拍数を適正化し、高度徐脈による症状の出現を予防します。
適応(選択)
ペースメーカー植え込みの医学的適応決定に際しては、症状の強さおよび徐脈との因果関係を考慮します。
植え込みの適応については、2001年に日本循環器学会が作成したガイドラインのクラスⅠ‥「有益であるという根拠があり、一般に同意されている」を、引用します。
・洞不全症候群‥脳虚血や心不全症状があり、それが洞機能低下などによることが確認された場合
・房室ブロック‥徐脈による明らかな症状を来す第Ⅱ度、第Ⅲ度房室ブロック
このほかに、徐脈性心房細動、2枝および3枝ブロック、過敏性頸動脈洞症候群・神経調節性失神に対してもペースメーカー植え込みの適応となる場合があります。
種類
心臓のどこを刺激するかによって、すなわちペーシング用リードを心臓のどこに入れるか(右心房、右心室、右心房と右心室、冠静脈洞)によってペースメーカーの種類が異なります。
また、ペースメーカーからの刺激が出始める設定最低心拍数を60/分などに固定するタイプや、人の活動を感知して、体の動きに応じて刺激心拍設定数が自動的に上昇するようなレート応答型のタイプもあります。
方法
X線装置が備わった手術室(あるいは心臓カテーテル検査室)において、鎖骨の下方にある静脈にリードを挿入します。先端部を右心房や右心室の壁に留置固定し、リードの他の端を本体に接続し、本体を胸壁の皮下に作成したポケット部に収めて終了です。
植え込み後
植え込んだ後は、6〜12カ月の間隔で外来でペースメーカーの機能に不調がないか、電池の残量は十分かなどについてチェックします。電池の寿命が尽きかけたら入院のうえ、ペースメーカー本体のみ交換を行います。