循環器の病気
急性心膜炎
きゅうせいしんまくえん
Acute pericarditis
初診に適した診療科目:循環器科 心臓血管外科
分類:循環器の病気 > 心臓と心筋・心膜の病気
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どんな病気か
心臓を取り巻く心膜の炎症です。急速に心タンポナーデ(コラム)という状態が進行し、生命に危険が及ぶ場合があるので、迅速な診断が要求されます。
原因は何か
原因は表19に示したようにさまざまですが、原因のわからない症例(特発性)もしばしばみられます。
ウイルスなどの感染によることが多く、しばしば炎症は心膜にとどまらず、心筋炎を併発することもあります。結核や肺がんなどの悪性腫瘍、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫性疾患が原因の場合もあります。
症状の現れ方
胸の痛みを訴えることがあります。ほかに胸痛を起こす狭心症や解離性大動脈瘤などと鑑別が必要ですが、心膜炎の場合はあお向けで寝た時に呼吸や咳が強まり、座ると軽くなる傾向があります。
同時に発熱や呼吸困難が現れることがあり、心タンポナーデの状態になっていると、血圧低下や意識レベルの低下などのショック症状が現れます。
検査と診断
胸部を聴診すると、独特な心膜のこすれる音(心膜摩擦音)を聴取できることがあります。
心電図では広範な誘導でST部分の上昇がみられ、心嚢液がたまっていると低電位を示すことがあります。
感冒(かぜ)様症状に続発する場合は、心筋炎の時と同様に、血液検査でウイルスの検索を行うと、炎症所見が認められることがあります。
悪性腫瘍の病歴や結核の既往(かかったことがある)などは原因を特定するうえで重要で、ツベルクリン反応も参考になります。
心嚢液貯留の程度は心エコー検査で容易に判定できますが、心膜液貯留が少量あるいはほとんど認められない場合もあり、心エコーのみでは診断できません。心膜液を穿刺し、その性状や悪性細胞の有無などを検査することは原因診断に有用であり、塗抹培養による細菌の同定なども行われます。アデノシンデアミナーゼ活性は、結核の補助的診断に極めて有用です。
治療の方法
①炎症に対する治療、②原因疾患に対する治療、③心タンポナーデに対する治療の3つを行います。心タンポナーデを示す重症の場合は、治療および原因検索のため、心嚢液のドレナージ(チューブを挿入して排液する)が必要です。
細胞診で悪性細胞が見つかった場合は、抗がん薬を心嚢内に投与し、心膜の癒着を図ることがあります。結核が原因である場合は、抗結核薬を6カ月内服します。後述する収縮性心膜炎への移行を予防するために、短期的にステロイド薬を併用する場合があります。
予後は原因疾患により異なります。
病気に気づいたらどうする
胸の痛みがある場合は、循環器専門医に相談してください。肺がん、結核、膠原病などの全身疾患に合併する場合は、他科の医師と連絡をとりながら治療します。
心タンポナーデ
心膜は、心臓表面を直接おおう臓側心膜と、心臓を縦隔や胸腔からへだてる壁側胸膜によって構成されています。通常、この2つの膜の間の心膜腔には、生理的に15〜20mlの心嚢液が存在し、潤滑油の役割をしています。
心タンポナーデは、過剰の液体がたまることにより心臓の拡張が極度に制限され、心拍出量が低下し、血圧低下やショックに進展する病態のことを指します。
心膜液がたまる速さによって、数百ml程度で心タンポナーデに陥る場合もありますが、緩徐な場合は1lたまっても心タンポナーデを起こさないこともあります。
心タンポナーデを起こしている場合は、すみやかに貯留液をドレナージする(チューブを挿入して排液する)必要があります。