こころの病気

広汎性発達障害

こうはんせいはったつしょうがい
Pervasive developmental disorders

初診に適した診療科目:小児科 精神科 神経科

分類:こころの病気 > 心理発達障害

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どんな障害か

 社会性に関連する領域にみられる発達障害の総称です。小児自閉症、アスペルガー症候群、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害、その他が含まれます。

原因は何か

 生物学的要因、主として遺伝によると考えられています。一部は、胎児性風疹、フェニルケトン尿症、結節性硬化症、染色体異常などに伴って生じます。

症状の現れ方

 次の3領域の発達における質的異常を特徴とします。

①対人的相互反応における質的障害(相手の気持ちがつかめない、場にあった行動がとれない)

②コミュニケーションの障害(言葉の使用の誤り、会話をつなげない)

③行動、興味、活動が限定していて反復・常同的

 これらの異常は幼児期早期から、家庭内および社会的場面で広く観察されます。具体的な現れ方は発達とともに変化しますが、これらの特徴はもち続けます。

 これらに加えて、何らかの感覚過敏が90%の人にみられます。聴覚(機械音、サイレン、ピストルの音、雑踏の音など)、味覚(偏食になる)、視覚(絵本の特定のページ、CMの場面)、触覚(抱かれる、洋服を着るなどの皮膚接触を嫌う)など特定の刺激に苦痛不快を示し、回避します。

検査と診断

 一般には、WHO(世界保健機関)の「国際疾病分類第10版(ICD‐10)」、または米国精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(DSM‐Ⅳ)」における広汎性発達障害に準拠して診断します。診察室での面接と観察、家族および学校の先生・保育者などからの情報を通じて、前述の3領域での症状を確認すると同時に、生育歴でその発達経過における特徴を確認します。

 診断に続く療育にあたっては、原因となる疾患についての検討、認知機能の特徴、知的障害の有無、統合運動の問題、学習能力などについての検討を行っておくことが必要です。

治療の方法

 今日、広汎性発達障害を改善する薬物は存在しません。医学的な治療が求められるのは、広汎性発達障害児が示すてんかん、不眠、不安・恐怖などの情緒的問題、行動上の問題などです。

 発達障害への対応として共通するのは、「子どもが障害をもちながら成長し、生活するにあたって必要な支援を適切に行う」ことが基本になるということです。これらの営みを療育といいます。その課題は、障害の特徴、年齢・発達とともに異なります。

障害に気づいたらどうする

 障害について気がかりな時は、まず地域の乳幼児健康診断を担当している保健師、地域の障害児福祉の窓口になる児童相談所の担当者に相談します。

 医療機関で診断を求める場合は、発達障害に詳しい小児科医・小児神経科医、児童精神科医が望ましいです。

(中央大学文学部教授 上林靖子)