こころの病気

自己愛性パーソナリティー障害

じこあいせいぱーそなりてぃーしょうがい
Narcissistic personality disorder

分類:こころの病気 > パーソナリティー障害

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どんな障害か

 この障害は、傲慢な態度、自分に関する限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛といった空想、誇大的自己像、他人を不当に利用する、他人への共感性の欠如、自己像を傷つけられる体験に対する憤怒(自己愛憤怒)などを症状としてもちます。現代の資本主義的な競争社会において生き残ることを至上命題としたようなこの病態は、精神分析の研究により描き出された障害ですが、日本の精神科の臨床現場ではあまり診断されない障害です。

 患者さんは特有の尊大さの背後に、自信のなさが強くみられます。日本人では自己愛の障害は、尊大であるより、むしろ他人に対する強い怯えをもった形で表現されることが多いと考えられています。典型的な症例ほど医療現場には現れず、クレーマーなどとして社会のなかでトラブルを起こしていたりすることが多くみられます。あまりにトラブルが多く、本人がこのため抑うつ的になったり、不眠になったりというように付随した症状のために外来を訪れるのが治療のきっかけとなることが少なくありません。

治療の方法

 本障害の治療として最も多く行われるのは、障害に付随した不眠、抑うつ、また身体不調などに関する対処的治療です。この障害自体への治療は、ハインツ・コフートにより開発された自己心理学に基づく精神分析的精神療法が知られています。

 この療法は、患者さんの本来脅かされやすい自己像を、治療者が肯定的に評価し共感を与えていくことにより強化していくものです。数年の時間を要する治療ですが、本障害に特化された治療としては有効な方法であると考えられています。こうした病態への基本的接近は、患者さんが語る空想を否定せず、現実的なことを直視させるより、患者さんがよく機能している部分を評価する方法です。

(東京慈恵会医科大学精神医学専任講師 小野和哉)