女性の病気と妊娠・出産

子宮頸がん

しきゅうけいがん
Cervical cancer

初診に適した診療科目:産婦人科 婦人科

分類:女性の病気と妊娠・出産 > 子宮の病気

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どんな病気か

 子宮は、図11のように、「とっくり」を逆さにしたような形をしています。子宮の細い部分(頸部)の先端が腟の奥に突き出ています。子宮頸部の上皮(粘膜)から発生するがんのことを子宮頸がんといいます。がんは、はじめは上皮のなかにとどまっています(上皮内がん)が、次第に子宮の筋肉に浸潤します。さらに腟や子宮のまわりの組織に及んだり、骨盤内のリンパ節に転移したりします。さらに進行すると、膀胱・直腸を侵したり、肺・肝臓・骨などに転移したりします。

 子宮頸がんは、40、50代に最も多い病気ですが、20代の人や80歳以上の人にもみられます。

原因は何か

 ほとんどの子宮頸がんでヒトパピローマウイルスの遺伝子が検出されます。そのため、このウイルスに感染することが子宮頸がんの発生の引き金と考えられています。このウイルスは性交により感染するので、初めて性交した年齢が低い人や多くの性交相手がいる人は子宮頸がんになる危険性が高くなります。

 しかし、実際に子宮頸がんになる人は、ウイルスに感染した人のなかの一部にすぎません。発がんには、ウイルスに感染した人の体質(遺伝子の不安定性や免疫など)も関係していると考えられています。

症状の現れ方

 初期の子宮頸がんではほとんどが無症状ですが、子宮がん検診で行う子宮頸部細胞診により発見することができます。

 自覚症状としては不正性器出血(月経以外の出血)が最も多く、とくに性交時に出血しやすくなります。おりもの(帯下)が増えることもあります。進行がんでは下腹部痛、腰痛、下肢痛や血尿、血便、排尿障害が現れることがあります。

検査と診断

 子宮頸部を綿棒などでこすって細胞診用の検体を採取します。細胞診で異型細胞が認められた場合には、腟拡大鏡(コルポスコープ)で観察しながら、疑わしい部分の組織を採取します(ねらい組織診)。採取した組織を病理学的に検査して診断を確定します。進行がんの場合は肉眼で見ただけでわかりますが、確定のために細胞診と組織診を行います。さらに内診・直腸診で腫瘍の大きさや広がりを調べます。

 子宮頸がんの診断がついた場合は、胸部X線検査、経静脈性尿路造影、膀胱鏡、直腸鏡検査を行い、臨床進行期(表2)を決定します。腹部超音波検査・CT・MRIによって病変の広がりを調べることも、治療法の選択にあたり重要です。

治療の方法

 手術療法または放射線療法が子宮頸がんの主な治療法です。治療法は年齢・全身状態、病変の進行期を考慮して選択されます。治療成績は手術・放射線ともほぼ同じですが、日本では手術が可能なⅡ期までは手術療法が選ばれる傾向にあります。

 0期に対しては子宮頸部だけを円錐形に切り取る円錐切除術を行うことで、術後に妊娠の可能性を残すことができます。また、レーザー治療を行うこともあります。妊娠の希望がない場合は単純子宮全摘術を行うこともあります。

 Ia期(I期のなかで浸潤が浅いもの)の場合は単純子宮全摘術が標準的ですが、妊娠を強く希望される人の場合は、円錐切除術のみを行うことがあります。

 Ib〜Ⅱ期の場合は広汎子宮全摘術が一般的です。広汎子宮全摘術では、子宮・子宮傍組織・卵管・卵巣・腟の子宮側3分の1程度・骨盤リンパ節を摘出します。40歳未満の場合は卵巣を温存することもあります。摘出物の病理診断でリンパ節転移や切除断端にがんがあった場合は、術後に放射線療法を追加します。

 高齢者・全身状態の悪い人やⅢ・Ⅳ期の場合は、手術の負担が大きいため放射線療法を行います。

 放射線療法は通常、子宮を中心とした骨盤内の臓器におなかの外側から照射する「外部照射」と、子宮・腟の内側から細い器具を入れて照射する「腔内照射」を組み合わせて行います。放射線療法を行う際は、同時に抗がん薬(シスプラチンなど)を投与する化学放射線療法のほうが、放射線単独療法よりも治療効果が高いことが報告されており、最近では化学放射線療法が標準的になっています。

 肺・肝臓・骨などに遠隔転移がある場合、通常は化学療法が選択されます。

病気に気づいたらどうする

 不正性器出血があったら婦人科で検査を受けるのがよいでしょう。症状がなくても、年に1回程度は子宮がん検診(コラム)を受けることをすすめます。

(日本赤十字社医療センター産婦人科副部長 山田 学)

子宮がん検診

 がんも初期の段階で治療すれば大部分が治癒します。しかし、初期のがんでは自覚症状がほとんどありません。そのため早期発見を目的としてがん検診が行われます。

 子宮頸がんは、簡単で負担の少ない診察・検査により早期発見が可能です。そのうえ検診により早期発見・治療することで子宮頸がんによる死亡率が低下しており、検診の有効性が認められています。

 子宮頸がん検診では、問診、視診、細胞診、内診を行います。問診では、年齢、妊娠分娩歴、月経の状態、不正出血の有無などを聴取します。視診では腟鏡を挿入して子宮頸部を肉眼で直接観察します。次に子宮頸部から細胞を採取します。綿棒・ブラシ・ヘラなどを用いて子宮頸部をこすり、こすったものをスライドグラスに塗ります。このとき少し出血することがありますが、痛みはほとんどありません。

 採取された細胞は固定・染色され、のちほど細胞検査士と細胞診指導医が判定します。細胞採取に引き続いて内診を行い、子宮の位置・大きさ、圧痛・癒着の有無、左右の卵巣・卵管の腫大の有無を調べます。

 細胞診で異常が疑われた場合は二次検診(精密検診)が必要です。二次検診では、細胞診の再検、コルポスコピー(腟拡大鏡検査)、ねらい組織検査、子宮頸管粘膜掻爬などを行って診断を確定します。

 子宮体がん検診は、最近6カ月以内に不正出血のある人のなかで、①年齢50歳以上、②閉経以後、または③未妊婦で月経不規則のいずれかの条件にあたる人を対象とします。

 子宮内膜細胞診は、子宮腟部を消毒したのちに、細い細胞採取器具を子宮の内腔に挿入して子宮内膜細胞を採取します。採取する時に軽い痛みと出血があります。子宮内膜細胞診は子宮体がんの検出方法として非常に有効な方法です。しかし、子宮穿孔や子宮内感染を起こす可能性がわずかにあるため、対象を絞って行います。

 有効な検診方法であってもすべてのがんを検出できるわけではありません。検診後にも不正性器出血などの症状があれば、あらためて婦人科を受診してください。

(日本赤十字社医療センター産婦人科副部長 山田 学)

図11 子宮の解剖図11 子宮の解剖

表2 子宮頸がんの臨床進行期分類(日本産科婦人科学会、1997年)表2 子宮頸がんの臨床進行期分類(日本産科婦人科学会、1997年)