お年寄りの病気

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

まんせいへいそくせいはいしっかん(COPD)
Chronic obstructive pulmonary disease (COPD)

初診に適した診療科目:呼吸器科 内科

分類:お年寄りの病気 > 呼吸器疾患

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どんな病気か

 肺は、外界に直接、接している内臓で、いつも外気に触れていて、肺に出入りする空気の量は1日1万lを超えます。そのため、ガス体や微粒子を含む汚染された空気を繰り返し長期にわたって吸入するような環境下で生活していれば、影響を受けて病気になることがあります。

 慢性閉塞性肺疾患は、これまで慢性気管支炎、肺気腫といわれてきた病気を総称した呼び名です。現在は英語の名称、chronic obstructive pulmonary disease をとって世界中で共通の病名、COPDが用いられるようになりました。

 世界の死亡原因ランキング(世界銀行調査)によると、COPDは1990年の6位から2020年には3位になると予想されています。

 また、病気によって生じる人的負担は、早死により損失した年数と、障害のある状態で生存した障害の重症度で調整した合計値(DALY)により算出しますが、これによるとCOPDは、1990年の12位から2020年には5位に上昇するといわれています。

 COPDは糖尿病なみに多い病気で、日本での患者数は500〜700万人と推定されています。しかし、実際に治療を受けている人は20数万人程度といわれ、著しく診断率が低いことが問題になっています。

原因は何か

 COPDは、汚れた空気を繰り返し吸うことにより発症します。いちばんの原因はたばこです。COPDの人の95%以上はたばこが原因で、喫煙者のなかの約20%がCOPDになるといわれています。COPDは、予防できる肺の生活習慣病として注意しなければなりません。

 日本は、先進諸国のなかではきわだって喫煙率が高いままで、また青少年、若い女性の喫煙率が上昇していることから、さらに患者数は増えると予測され、対策が求められています。WHO(世界保健機関)は2001年にGOLDと呼ばれる診療の指針を発表し、世界的な啓蒙活動を行うことを求めています。

症状の現れ方

 COPDは中高年に多い病気で、主な症状は咳、痰、息切れです。しかも、これらの症状は通常、歳をとるにつれてゆっくり進行していきます。息切れがあってもかぜだと考えたり、歳のせいだと思い込んで、適切な医療を受けていないことが問題です。

 とくに息切れは、階段や坂を登る時に強く、病気が悪化していくと家から外出できずに引きこもりがちになり、やがてベッドから出られなくなる、つまり寝たきりの原因となりえます。

 高齢者の気管支喘息は、COPDと混同されていることが少なくありません。しかし、COPDは気管支喘息と違って、肺がんや、脳卒中などの体のほかの臓器の病気を多く合併していることが少なくなく、また治療が不十分だと年ごとに肺機能は急速に低下していきます。

検査と診断

 決め手となる診断方法は、スパイロメトリーと呼ばれる簡単な肺機能検査です。COPDの可能性が高いことがわかったら、気管支を拡張させるような吸入薬を吸って、その前後で精密な肺機能検査を行います。これによって、治療薬の効果をあらかじめ推定することができます。

 また、息切れが心臓の病気など、ほかの原因で起こっていないかを調べます。胸部のCT検査は、肺胞と呼ばれる肺の細かな構造が広い範囲で壊れているかどうかの手がかりになり、肺がんの合併をチェックすることができます。

治療の方法

 リスクを除くこと、つまり禁煙を厳守しなければなりません。節煙やニコチンの量の少ないたばこに変えても、COPDは確実に進行していきます。

 気管支を広げるような吸入薬を最初に使います。これには、β2刺激薬と呼ばれるものと、抗コリン薬に分類されるものがあり、両方を使うことで相乗効果があります。ステロイドの吸入薬や、そのほかに飲み薬を使うこともあります。

 肺機能検査によって病気の重症度を判断し、これに基づいて治療方針が決められるよう診療のガイドラインが発表されています(図8)。

包括的呼吸リハビリテーション

 COPDの日常生活上の注意では、適度な運動と栄養の管理が大切で、また、包括的呼吸リハビリテーションと呼ばれる全身管理が効果的です。これは、医師、看護師、理学療法士、栄養士、薬剤師、医療ソーシャルワーカーなどがチームワークを組んで包括的に行う医療で、次第に広まってきています。

(日本医科大学呼吸器内科教授・同呼吸ケアクリニック所長 木田厚瑞)

図8 COPDの診療ガイドライン図8 COPDの診療ガイドライン