子どもの病気
細菌性尿路感染症
さいきんせいにょうろかんせんしょう
Bacterial urinary tract infection
初診に適した診療科目:小児科
分類:子どもの病気 > 泌尿器と性器の病気
広告
広告
どんな病気か
図25のように腎盂から尿管、膀胱へと続くおしっこの通り道を尿路といいますが、そのなかに細菌が入り込んで炎症を起こすことを細菌性尿路感染症といいます。
原因は何か
細菌は例外的に血液のなかを回って腎盂に直接入ることもありますが、尿の通る方向とは反対に、おしっこの出る尿道口から侵入した大腸菌が原因になることがほとんどです。
女児のほうが尿道が短いために細菌が入りやすいのですが、まだおちんちんの皮がむけていない男児の場合も、包皮と亀頭の間に垢がたまって細菌が入りやすい状態になっています。
したがって何らかの理由で尿が逆流したり、停滞した状態が続くと、菌が侵入したり繁殖しやすくなって感染を起こします。尿路に先天的な奇形があり、そのために尿路感染症を繰り返す場合もあります。
症状の現れ方
図25のように尿路感染症は尿路のどこで炎症が起きているかで、膀胱炎や腎盂腎炎などに分けられます。膀胱炎では尿が黄色くなる、においがする、尿の回数が増える、排尿時に痛みがあるなどの膀胱刺激症状といわれる症状が起こりますが、腎盂腎炎ではかぜ症状がないのに突然38・5℃以上の発熱がみられ、嘔吐や下痢を伴うこともあります。
検査と診断
尿検査を行って、尿に細菌がいるかどうかや炎症の時に見られる細胞が現れているかどうかを確認します。熱がある場合は血液検査で炎症の程度を調べ、腎盂腎炎になっているのか、膀胱炎なのかを区別します。
先天的な尿路の奇形が原因で尿路感染症を繰り返すことがあるので、何度も起こす子どもでは超音波検査や造影剤を使って腎臓や膀胱などの尿路の形をX線で検査し、先天奇形の有無を確認することがあります。
治療の方法
膀胱炎なら抗生剤の内服で治りますが、腎盂腎炎の場合には入院のうえ、抗生剤の点滴治療が必要になります。また先天的な尿路の奇形(尿路のどこかが狭い先天性水腎症や、膀胱の尿が尿管や腎盂に逆流してしまう膀胱尿管逆流現象)が原因で尿路感染症を繰り返す子どもでは、それらに対する手術を行うこともあります。
病気に気づいたらどうする
小児科を受診してください。乳児の細菌性尿路感染症のほとんどは、便に含まれる大腸菌が尿路をさかのぼって起こるので、再発を防ぐためには「うんちがでたら早めにおむつを交換する」、「女の子のおしりを拭く時は前から後ろに拭くように心がける」などに注意します。
おしっこの流れが滞ると、細菌も繁殖しやすくなります。膀胱炎や腎盂腎炎にかかったら、たっぷりと水分を補給してあげます。尿量が増えておしっこがたくさん出ると、菌もいっしょに排出される効果があります。また尿路感染症にかかっていなくても、水分を多めに与えると感染予防になります。
関連項目
膀胱尿管逆流現象
腎臓でつくられた尿は尿管を通って膀胱にためられますが、尿管と膀胱のつなぎ目(接合部)の異常のため、膀胱にたまった尿が再び尿管、さらには腎臓に逆戻りする現象を、膀胱尿管逆流現象と呼びます。
乳児期には約1%の子どもにこの異常が認められますが、多くの子どもでは成長とともに自然に治るものと考えられています。
膀胱尿管逆流現象の主な原因は、尿管と膀胱の接合部が生まれつき弱く、逆流を防止する弁のはたらきがないためと考えられます(図26、図27)。
この病気が発見されるきっかけで最も多いのは尿路感染症です。これは尿の通り道や腎臓に細菌が入り込んで起きる病気で、高熱や側腹部・背部痛がみられることもありますが、乳児の場合は、高熱のほかに下痢や嘔吐、不機嫌といった一見腎臓とは関係のない症状で始まることもあるので注意が必要です。
かぜの症状がないのに何回も高熱を繰り返す場合には、尿に異常がないかどうかを小児科医に相談してみてください。
尿路感染症を起こした子どもの30〜50%にこの膀胱尿管逆流現象が隠れているといわれているため、尿路感染症が治ったあとに超音波検査や膀胱造影検査を行って膀胱尿管逆流現象がないかどうか、その程度は軽いか重いかを確認します。
程度の軽い場合は成長とともに80%以上が自然に治りますが、重症の膀胱尿管逆流現象を放置すると、腎機能が低下して腎不全になることがあります。また逆流腎症と呼ばれる長期的合併症を起こし、高血圧や腎不全になることもあります。
逆流腎症
膀胱尿管逆流現象による腎臓への尿の逆流により、腎臓に障害が起こるものを逆流腎症といいます。軽いものも含めると膀胱尿管逆流現象の患者さんの約3分の1に起こるといわれています。
原因として、膀胱尿管逆流現象の患者さんが繰り返し尿路感染症を起こすことや、排尿するたびに膀胱内の圧力が腎臓へ負担をかけることなどが考えられています。
逆流腎症になってしまった腎臓は瘢痕形成といってやけどのあとのケロイドのようになります。程度がひどいと末期腎不全といって、人工透析や腎移植が必要な状態にまでなることもあります。膀胱尿管逆流現象が発見された子どもで、逆流腎症になる可能性が高いと考えられる場合には、膀胱尿管逆流現象に対する手術を行います。