血液・造血器の病気

骨髄穿刺・骨髄生検

分類:血液・造血器の病気

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 骨髄は、骨の中にあるゼリー状の組織で血球の工場です。ここに針を刺して骨髄血を採取する検査を骨髄穿刺、より太い針で骨髄の一部(組織)を採取する検査を骨髄生検といいます。血液検査で血球数の増加・減少、異常細胞の出現が認められた場合に原因を確認するために行われる検査です。

 また、白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの血液疾患では、その診断のためだけではなく、治療効果の判定や病気の広がり(臨床病期)を確認するためにも骨髄検査を行います。

 骨髄穿刺はベッドサイドで比較的短時間で行うことができ、外来でも行うことが可能です。検査をする時には、ベッド上でうつ伏せになって腰からお尻を出してもらいます。検査は腰の骨(腸骨)で行います。

 検査部位の皮膚を消毒した後、皮膚と腸骨表面に局所麻酔をし、皮膚、骨を通して骨髄穿刺針を骨髄に達するまで進めます。骨髄に針が到達したところで針に注射器をつけて2〜3㏄の骨髄血を吸引します(図12)。採取した骨髄血はスライドガラスに塗りつけて染色し、顕微鏡で細胞の形態を観察します。さらにその一部で染色体、細胞表面マーカー、遺伝子の検査を行います。

 骨髄穿刺に続いて骨髄生検を行う場合は、再度麻酔をして、穿刺を行った部位により太い針(ジャムシーディ針)を刺して、骨髄の組織を採取します。採取した組織は薄く切り、スライドガラスに載せて染色し、顕微鏡で観察をします。骨髄生検は骨髄そのものの状態を観察できる利点があり、骨髄の線維化や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫の状態の評価に適しています。

 骨髄穿刺は前胸部の骨(胸骨)からも可能ですが、大血管や心臓を包む膜(心膜)、肺に損傷を与える恐れがあるため原則としては行わず、安全性の高い腸骨で行います。骨髄生検は腸骨以外では行われません。

 骨髄検査の合併症としては、検査部位の出血・疼痛の持続、血の固まり(血腫)の形成、神経の損傷、検査部位の感染症、局所麻酔薬によるアレルギーが現れることがまれにあります。

(慶應義塾大学病院血液内科 矢部麻里子)

(慶應義塾大学病院血液内科 山根明子)

(慶應義塾大学病院血液内科教授 岡本真一郎)

図12 骨髄穿刺の実際図12 骨髄穿刺の実際