肝臓・胆嚢・膵臓の病気

転移性肝がんのラジオ波治療

分類:肝臓・胆嚢・膵臓の病気

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 ラジオ波は、皮膚を2〜3㎜切り、電極をがんに挿入し、100℃に熱して死滅させる治療法です。1回に径3㎝の組織が焼灼されます。大きながんでは電極を何カ所かに入れ分けます。100℃に熱せられる範囲にがんがすべて含まれれば、確実に治癒します。適応は3㎝以内3個以下が一般的です。CTで効果を判定し、がん残存の可能性があればその部分を狙ってラジオ波を追加します。きちんと追加治療を行えば、99%の患者さんでがんが消失しています。

 ラジオ波は全身麻酔や開腹手術が不要なので、高齢者にも可能です。東大病院では最近は患者さんの平均年齢は70歳を超え、80歳以上が11%です。ラジオ波による治療なら、治療時間は30分〜2時間、その後ベッド上安静、食事は4時間後から、歩行は翌日から可能です。

 ラジオ波は主に肝細胞がんに実施されてきましたが、成績も手術以上です。がんが3㎝以内3個以下で肝硬変が軽い患者では、5年生存率は73%です。

 転移性肝がんにもラジオ波が有効なことはあまり知られていません。ラジオ波で治療した大腸がん肝転移107名のうち、肝転移発見後すぐにラジオ波を受けたのはわずか25%で、28%は肝切除後に、47%はその他の治療後に受けていました。それでも生存率は、1年92%、3年67%、5年41%、7年36%です。

 このなかには、肝以外にもがんがあったり、がんの数が多すぎたり、心臓や肺の病気で手術不能の方が57名いました。手術可能者50名(81歳以上6名含む)での5年生存率は64%で、肝切除の5年生存率である40%前後を上回っています。進行がんにも化学療法と組合せ、良好な成績を上げています。

 ラジオ波治療は実績ある施設をおすすめします。単純な治療にみえますが、技術と経験がないと、がんが残存したり周りの組織を損傷したりします。また、高性能の超音波やCTの有無も重要です。

 高齢化が進み治療におけるQOLが重視されるなかで、ラジオ波はますます重要な役割を担っていきます。

(東京大学医学部消化器内科学講師 椎名秀一朗)