肝臓・胆嚢・膵臓の病気

食道・胃静脈瘤

分類:肝臓・胆嚢・膵臓の病気

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 門脈の流れにどこか障害が生じると、流れが悪くなるとともに門脈圧が上昇してきます。また、その上流では血液がとどこおり、どこか抵抗の少ない方向に血液を流そうとします。ここに副血行路(バイパス)が生じます。

 門脈圧亢進症では、心臓へ血液を環流させるために代表的な3つの副血行路として、①食道下部に向かうもの、②臍周囲に向かうもの、③肛門周囲に向かうもの、があります(図10)。これらの副血行路のうち最も重要なのは①で、これについて以下に詳しく説明します。

 正常では、食道下部、胃上部からは左胃静脈が門脈に流入していますが、門脈の流れに障害が生じると門脈圧の上昇と門脈血流量の増加が起こります。この部の血流が逆流して門脈から食道下部、胃上部に向かう遠肝性副血行路が発達してきます。

 多量の血液が胃上部、食道下部の壁(粘膜固有層、粘膜下層)の血管内に流入すると、血管は拡張、蛇行をするようになり、食道表面に隆起をつくるようになります(静脈瘤の形成)。胃には脾臓の近くから副血行路(短胃静脈)が生じて、胃静脈瘤が形成されることもあります。

 これらの副血行路の発達が強くなると食道、胃の上皮を破って静脈瘤が破綻することとなり、大量の吐血・下血が生じます。処置が遅れると、死亡率は増してきます。

 なお、②の臍周囲に向かう副血行路では、腹壁静脈の拡張がみられます。③の肛門周囲に向かうものでは、直腸静脈の拡張が生じ、直腸静脈瘤の形成がみられます。

(朝倉医師会病院院長補佐 荒川正博)

図10 門脈圧亢進症により発生する副血行路図10 門脈圧亢進症により発生する副血行路