食道・胃・腸の病気

腹膜とは

分類:食道・胃・腸の病気

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 腹膜は腹腔の内面および腹腔内の臓器をおおうひとつのつながりをもった膜で、腹腔内面・骨盤腔・横隔膜下面をおおう壁側腹膜と、腹腔臓器をおおう臓側腹膜からなります(図26)。腹腔の前壁は腹壁と呼ばれ、皮膚や筋肉でできています。後壁は脊椎、肋骨、筋肉で形成されています。腹膜の背部と後壁の間は厚い脂肪の層になっており、これを後腹膜腔(図27)と呼んでいます。そのなかに十二指腸、膵臓、脾臓、腎臓などの臓器があり、これらは後腹膜臓器といわれています。

 腹膜の主なはたらきとしては、水分・電解質・糖質などを腹腔から吸収したり、腹腔内に炎症が起きた場合に滲出液と呼ばれる食菌・抗菌作用を有する物質の分泌や毒性産物の吸収の抑制を行う生体防御能を担っています。一方で、腹膜に物理的・化学的あるいは感染などの刺激が加わり、炎症が及んだ時には癒着能がはたらき、炎症変化をすみやかに限局させて炎症が広がらないような作用をします。また、腹膜は腹腔内の圧力を一定に保つはたらきをしています。

 腹腔内は通常無菌ですが、女性では卵管で外界と通じていて、とくに骨盤腹膜炎の原因になります。

(弘前大学名誉教授 棟方昭博)

図26 腹部と骨盤部の正中横断面図26 腹部と骨盤部の正中横断面

図27 後腹膜腔の解剖図27 後腹膜腔の解剖