食道・胃・腸の病気

内視鏡的消化管出血止血法

分類:食道・胃・腸の病気

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 内視鏡検査は、以前は診断が主目的でしたが、内視鏡手技の進歩や周辺機器の開発とともに内視鏡でさまざまな治療が可能となり、その意義がますます重要になってきています。消化管出血を起こす疾患の多くは、緊急内視鏡検査の適応となり内視鏡的に治療されています。

 代表的な内視鏡的止血法には①薬剤局注法、②熱凝固法、③機械的止血法、④薬剤散布法があります。どの方法を用いるかは、出血の原因や出血の程度によって異なってきますが、最も頻度が高い胃・十二指腸潰瘍出血では、どの止血法でも止血率にはほとんど差がなく95%以上です。

①薬剤局注法

 薬剤局注法は、内視鏡から局注針を用いて出血部位に薬剤を注入する方法で、局注に用いる薬剤としては、純エタノールと高張ナトリウムエピネフリンがあります。純エタノールは、エタノールの脱水作用により血管収縮、凝固を図る方法です。高張ナトリウムエピネフリンはエピネフリンの血管収縮作用、高張食塩水によるエピネフリン薬理作用の延長と組織膨化、血管内の血栓形成により止血する方法です。薬剤局注法は、主に胃・十二指腸潰瘍の露出血管からの出血に対して使用します。その他の薬剤としては、食道・胃静脈瘤からの出血に用いられる5%オレイン酸モノエタノールアミンや1%エトキシスクレロールがあります。

②熱凝固法

 熱凝固法には、アルゴンプラズマ凝固とソフト凝固があります。アルゴンプラズマ凝固はアルゴンガスをプラズマ化し、そこへ高周波電流を誘導することで組織の焼灼凝固を行う方法で、広く浅い出血に対して短時間で治療できます。ソフト凝固は内視鏡的粘膜下層剥離術時の出血に主に使用され、電圧を200V以下に制御し、スパークを発生させず組織の炭化を防ぎ組織をゆっくり脱水凝固するもので、潰瘍出血にも応用されています。

③機械的止血法

 クリップ法は、血管を直接把持するため、組織損傷が最も少なく安全確実な方法です。クリップは、ポリープ切除などの内視鏡治療後の出血防止としても使用されます。そのほかの機械的止血としては、食道静脈瘤の出血にO‐リング(ゴムバンド)を用いて静脈瘤を結紮し、血流を遮断する方法があります。

④薬剤散布法

 0・1%ボスミン液、トロンビン、アルギン酸ナトリウムなどの止血薬を出血部に散布する方法で、ほかの止血法の併用療法として用いられています。

(佐賀大学医学部内科講師 坂田祐之)

(佐賀大学医学部内科教授 藤本一眞)