のどの病気

リンパ節炎、転移性腫脹

分類:のどの病気

広告

広告

 頸部のリンパ節がはれる場合の多くは、炎症か悪性腫瘍の転移によるものです。通常はいずれも、はれたリンパ節に近い部位に原病巣があります。

 炎症では、歯性感染症や口のなかの創感染、唾液腺炎、扁桃炎、咽頭炎などに引き続いて生じることが多く、顎下部や下顎の角近くの頸部リンパ節が発熱、痛みを伴ってはれます。特殊なリンパ節炎である亜急性壊死性リンパ節炎や伝染性単核球症などでは、両側頸部にリンパ節腫脹が多発することがあります。

 細菌性リンパ節炎では、感染のコントロールがうまくいかないとリンパ節腫脹がひどくなり、膿瘍化することがあります。膿瘍化すると、切開してうみを出す必要があります。

 近年、結核感染が増えつつあり、頸部にも結核性リンパ節炎がみられることがあります。皮膚が破れてうみが出た場合などには、二次感染に気をつけなければなりません。少しでも疑いがあれば、ツベルクリン検査や菌検査などを行い、早期に確定診断する必要があります。

 リンパ節腫脹で最も注意しなければならないのは、悪性腫瘍の転移によるものです。通常は、原発部の症状があってしばらくしてから転移が生じますが、上咽頭がんなどでは、頸部のリンパ節腫脹が初発症状のことがあります。炎症と同じように、原病巣にいちばん近い部位のリンパ節に最初の転移が生じるのが普通ですから、転移性リンパ節腫脹が疑われる場合には、口腔、咽頭、喉頭、食道、唾液腺や甲状腺などのがんに注意する必要があります。

 症例は少ないのですが、内臓から頸部のリンパ節に転移が生じる場合や、全身くまなく探しても原発部位が見つからない場合もあります。また、リンパ節に原発する悪性リンパ腫という腫瘍もあります。悪性腫瘍では、組織型から原発部位が推測されるため、細胞学的な検査も重要です。

 痛みや発熱など、炎症症状のないリンパ節腫脹があった場合は、腫瘍の可能性も考えて、急いで病院を受診しなければなりません。

(谷垣内耳鼻咽喉科理事長 谷垣内由之)