歯と歯肉の病気

知覚過敏症

分類:歯と歯肉の病気

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 むし歯がないのに冷たい水を含んだり、冷たい空気に触れたり、歯ブラシなどで歯を擦ったりした時に、一過性に歯に痛みが起こるものを知覚過敏症(象牙質知覚過敏症)といいます。

 知覚過敏症の原因は、歯肉が退縮したり、摩耗・咬耗により象牙質が露出した時に、象牙質の表面に与えられた刺激が歯髄側の歯の神経に伝わって、神経に興奮が起こって痛みとして感じるため、とされています。与えられた刺激は直接神経に伝わるのではなく、象牙質内の細い管(象牙細管)内に存在している液体が動くことにより神経に間接的に刺激が伝わって痛みを起こすと考えられています。いつもこのような刺激を受けて歯の神経が興奮することを繰り返していると、しだいに神経の知覚亢進が起こってくることもわかっています。

 治療法は知覚過敏の症状の強さに応じてさまざまです。時々一過性に痛みが起こるが、ほとんど気にならない程度の痛みの場合は、何も治療せずに経過観察をしても症状が悪化することはほとんどありません。頻繁に痛み自体は起こるものの比較的軽度な場合は、象牙質の表面を薬物や接着材を塗布する方法を行います。

 また、象牙質の表面をコーティングする成分を含んだ歯磨き粉を用いて適切なブラッシングを継続すると、症状が緩和あるいは消失することがよくあります。象牙質表面に開いている象牙細管の孔を閉鎖するのが目的です。また、一度知覚過敏症の治療を行って症状が消えても、同じ症状がぶり返してくることがよくあります。この場合は、再度同じ処置を行うことで痛みがなくなることがほとんどです。

 重度の知覚過敏症には、まず軽度な場合と同様に薬物や接着剤の塗布を試みます。また、歯の欠損部が存在する時は、むし歯の治療と同じように少し形を整えてから充填する治療も行われます。これらの方法を行っても症状が改善されない場合は歯髄炎に進んだと診断して、歯髄除去療法(抜髄、断髄)が行われます。

(東京医科歯科大学医歯学教育システム研究センター教授 荒木孝二)