眼の病気

光線力学的療法(PDT)

分類:眼の病気

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 光線力学的療法(Photodynamic therapy:PDT)は滲出型加齢黄斑変性症の治療法として、日本では2004年に厚生労働省認可のもと導入されました。光感受性物質(ベルテポルフィン:商品名ビスダイン)を低出力のレーザー光で活性化して活性酸素を発生させ、血管内皮障害を起こすことで血栓形成を誘導し、血管閉塞を引き起こすという原理です。認可と同時に加齢黄斑変性症の第一選択治療として、日本で現在までに4万人を超える患者の治療が行われました。

 近年、抗血管内皮増殖因子療法(抗VEGF療法)が登場すると、欧米における比較対象試験において抗VEGF療法の視力維持・改善効果がPDTのそれを有意に上回ったため、現在欧米でPDTはほとんど行われなくなってしまいました。しかしながら、加齢黄斑変性症の病型が欧米と日本では大きく異なり、欧米には少ない(約10%)とされるポリープ状脈絡膜血管症(PCV)が日本では滲出型加齢黄斑変性症の約半数を占めるまでに多くみられるなど、加齢黄斑変性症の背景に民族特異的な因子が関与している可能性が高いことや、とくにポリープ状脈絡膜血管症へのPDT治療成績が短中期的には良好であることから、少なくとも日本の滲出型加齢黄斑変性症に対するPDTの実績では80〜90%の症例で1年後の視力が維持ないし改善することが報告されています。ただし、ポリープ状脈絡膜血管症以外の滲出型加齢黄斑変性症に対する治療効果は、日本においてもPDTよりも抗VEGF療法に分があることが認められ、今後は病型によって治療法の選択あるいは併用がなされていくと予想されます。

 また、最近ではPDTの合併症をより少なくするために、レーザーの照射エネルギーを半量にするreduced-fluence PDTや、レーザーの照射範囲を必要最小限にするためにフルオレセイン蛍光眼底造影ではなく、インドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)の結果を元に病変の大きさを決定するIA-guided PDTが行われるようになってきました。

(神戸大学大学院医学研究科眼科学講師 本田 茂)