眼の病気

新生血管黄斑症に対する光凝固治療の考え方

分類:眼の病気

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 光線力学的療法(PDT)、抗血管内皮増殖因子薬(抗VEGF薬)が本格的に導入された現在、加齢黄斑変性をはじめとする新生血管黄斑症に対して、熱性レーザーによる光凝固治療は、最近ほとんど行われなくなりました(図51)。

 EBM(根拠に基づいた医療)の観点から、医学的には黄斑部の中心である中心窩の外にある脈絡膜新生血管(以下、新生血管)に対しては光凝固を行うという適応が今も残っています。しかし、新生血管を破壊する目的で光凝固を行う場合、新生血管だけを破壊することは不可能であり、どうしてもその周囲の網膜の光を感じる組織も熱によって破壊されてしまいます。このため、光凝固を行った部位には絶対暗点というまったく光を感じない領域ができてしまいます。つまり、光凝固は網膜の一部を犠牲にして新生血管を潰す破壊的治療法といえます。

 これに対して、PDTや抗VEGF薬などの新しい治療法は、病巣部の網膜に影響の少ない状態で新生血管を退縮させることが可能な治療であり、網膜に優しい、犠牲の少ない治療法であるといえます。暗点という視機能の損失ができるだけ少ない状態で治療を行いたいという考え方から、本来、中心窩に一致する新生血管のみに適応とされているPDTや抗VEGF薬を中心窩近傍や中心窩外の新生血管にも用いるという報告が出てきています。

 視機能の点だけからいえば、このような治療は理想的ですが、新しい治療にもそれぞれに欠点があります。

 PDTでは、今のところ初めての治療では2泊以上の入院が必要で、5日間、強い光を避ける必要があり、副作用として大出血が起こることがあります。

 抗VEGF薬は眼内への注射(硝子体内注射)がたびたび必要で、注射による副作用(眼内組織の損傷や眼内炎、脳梗塞などの全身の副作用)の危険性が叫ばれています。

 ここでもう一度、光凝固の利点を考えてみましょう。光凝固は、①新生血管を熱で直接凝固破壊するため、完全に凝固できれば新生血管を破壊する力が最も強い、②全身状態を考慮する必要がないシンプルな治療法であり、通院で、しかも短時間で行えるという利点があります。これらのことから、中心窩外の活動性病変をもち、上記のような新しい治療が行えない患者さんには光凝固治療の適応は残っていると思われます。また、治療のオプションとして、光凝固と薬物療法との組み合わせも今後考えていく必要があるでしょう。

(関西医科大学眼科学教授 騠橋寛二)

図51 新生血管黄斑症の治療の模式図 図51 新生血管黄斑症の治療の模式図