眼の病気

夜盲症

分類:眼の病気

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 俗に「鳥目」といわれる症状ですが、専門的には「暗順応障害」ともいいます。人間の眼は、明るさの異なるさまざまな環境のなかで物を見ることができます。真夏の太陽の下でも眼がくらんで見えないということはないし、夜中の星明りでも何とか物を見ることができます。

 それは主として、網膜に違う明るさのなかではたらく2種類の細胞をもっていることによります。明るい所ではたらく細胞(錐体細胞)と暗い所ではたらく細胞(杆体細胞)があるおかげで、いろいろな明るさのなかで物を見ることができるのです。

 明るい所から急に暗い所に入ると(たとえば映画館などで)すぐには見えませんが、徐々に眼が慣れてきて5分もすれば見えるようになります。その過程を暗順応といいます。その間に、見るはたらきの主役が錐体細胞から杆体細胞へとバトンタッチされるのです。

 夜盲症は、杆体細胞の機能が悪くなり暗順応ができなくなったために起こる症状です。明るい所から暗い所に入った時、日暮れ時などの状況で自覚したり、周囲の人が気づくことが多いようです。

 夜盲症の原因となる病気の代表が網膜色素変性症です。ほかにも、遺伝的に杆体細胞の機能が障害される先天性停止性夜盲、今では少なくなりましたがビタミンA欠乏症などで夜盲症が起こります。ビタミンA欠乏による夜盲症は、終戦後など栄養不足が深刻だった時代にはめずらしくなかったようですが、今では重症の肝硬変などでたまにみられる程度です。

 錐体細胞の機能が悪くなると、明るい所へ出た時にひどくまぶしくて見にくいという逆の現象が起こります。「昼盲」と呼ばれ、杆体細胞から錐体細胞へのバトンタッチができない(明順応障害という)ために起きる症状です。黄斑ジストロフィでは主要な症状ですが、網膜色素変性症でもよくみられます。

(前帝京大学医学部附属溝口病院眼科教授 河野眞一郎)