眼の病気

日和見感染

分類:眼の病気

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 日和見感染とは、普通の健康な人には感染症を起こさない弱い細菌やウイルスなどの病原体が原因で発症する感染症のことをいい、何らかの状態で免疫力が低下した時に生じてくる疾患の総称です。悪性腫瘍で抗がん薬投与中の人、高齢で体力が弱っている人、免疫不全の人(たとえば、エイズ:後天性免疫不全症候群)などに生じます。

 これらを引き起こす病原体は、私たちの周囲に常在しています。たとえば結核です。日本は先進国のなかでも結核の発症が非常に多い国ですが、この結核菌も日和見感染を引き起こします。

 眼の病気を引き起こす日和見感染の代表としては、真菌、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスやトキソプラズマ原虫が有名です。

 これらは平素から私たちの体に存在し、ほとんど害をなしません。しかし、免疫力が低下した状態では、これらの病原体は眠りからさめて暴れだし、重い視力障害・失明を引き起こし、時には命までも奪うのです。

 1981年以来、日本における死亡原因の第1位はがんであり、この治療のために多くの研究がなされ、がん克服に向け確実に成果を上げてきています。

 また日本人の平均寿命も毎年延びています。しかし、それは逆にいえば、多くの人ががんをもち、抗がん薬の治療を受け、そして以前よりも長く生きられる時代であるということです。

 皮肉にも、この状況は日和見感染症になる可能性が増すことを意味しており、事実、日常の診察でも日和見感染症は確実に増加しています。

 19世紀の医学は、感染症の克服が最大の関心事でした。20世紀に入り、感染症の克服がなされたと皆が信じ、次はがんの克服に関心が移りました。21世紀にはがんの克服も夢ではないと皆が信じる今、時代はまた日和見感染症の克服という新たな難問を突きつけられています。

(尾崎眼科院長 尾崎志郎)