眼の病気

角膜の構造と透明な理由

分類:眼の病気

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 角膜は、黒目の表面の厚さ0・5㎜の透明なドーム状の膜ですが、視覚器官である眼に光が入る入口のところにあり、水晶体とともに眼のレンズの役割をしています(図17)。したがって、角膜がにごったり、ゆがんだりすると視力が非常に障害されます。また、角膜には豊富に神経が分布しているので、角膜に傷がつくと痛みが生じます。

 角膜は3層構造をしており、表面をおおう上皮と内側をおおう内皮との間に角膜の大部分を占める実質があります。実質は、コラーゲンの線維とその間を埋める基質としてのグルコサミノグリカン(糖の一種)からなっていますが、その8割弱は水分でスポンジが水を含んだような感じになっています。

 角膜がなぜ透明なのか、その詳しいメカニズムはわかっていませんが、コラーゲンの線維がある一定の間隔をもって規則正しく配列していることが、透明であることのキーであると考えられています(モーリスの格子説)。そのため、角膜実質中の水分が増加して角膜が膨潤し、このコラーゲンの配列が乱れると、たちまち角膜は透明でなくなってしまいます。

 角膜のもうひとつの大きな特徴として、正常な角膜には血管がないということがあげられます。血管がないのにどうやって栄養分を受けとっているか不思議なところですが、角膜表面の涙と、角膜の周囲の白目の表面をおおっている結膜の血管と、角膜の奥にある眼内の前房というところにたまっている房水の三者によって栄養分をもらっているのです。

(鳥取大学医学部視覚病態学教授 井上幸次)

図17 角膜と涙液の構造図17 角膜と涙液の構造