脳・神経・筋の病気

ポルフィリン症

分類:脳・神経・筋の病気

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 生体内で、ヘム(鉄とポルフィリンの化合物)の70〜80%は骨髄で合成され、ヘモグロビンなどを形成します。残りのヘムは肝臓で合成されますが、ヘムの合成経路に関係する酵素の先天異常により起こる疾患の総称がポルフィリン症です。

 臨床的には、①急性ポルフィリン症(急性腹症、神経症状、精神症状などの急性発作を起こす)、②皮膚ポルフィリン症(日光や打撲により水疱が生じ、それが破れると混合感染を起こす。慢性化すると皮膚が厚くなる)に分類されます。

 半数以上は①で、遺伝子異常だけでは発症せず、薬物(禁忌薬物は数多く、使用する場合はリストでの確認が重要)、妊娠、飢餓などが誘引となります。①では、(a)四肢の急激に起こる運動麻痺、意識障害、けいれん、てんかん発作、自律神経症状などの神経症状、(b)激しい腹痛や腸閉塞を疑わせる腹部症状、(c)幻覚、妄想、ヒステリーに似た症状などの精神症状の3大症状が知られています。

 腹部症状があっても、X線検査では器質的な異常はみられません。非発作時(間欠期)は無症状で、何らこの病気としての徴候は出現しません。原因不明の3大症状(a・b・c)が次々に現れたら、まず本症を疑うことが大切です。

 ヘムを合成する経路の基質であるδ‐アミノレブリン酸、ポルホビリノーゲンや、その代謝産物(ウロポルフィリン、コプロポルフィリン)を測定して診断を確立します。潜在者(キャリア)の診断には遺伝子診断が有用です。

 治療は、グルコースを中心とした補液とインスリンの併用が効果があるとされています。禁忌薬物を絶対使用しないことが重要です。腹痛などの痛みに対しては、クロルプロマジンが使用されます。

(興生会相模台病院副院長/北里大学名誉教授 齋藤豊和)