脳・神経・筋の病気

遺伝子の検査

分類:脳・神経・筋の病気

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 遺伝とは何らかの素因が子孫に受け継がれることで、病気も遺伝する場合があります。家族に同じ病気の人がいる場合は、遺伝性の病気を考える必要があります。

 遺伝性の病気は、遺伝子の異常で発症します。遺伝子は細胞内のDNAという物質から成り立っており、これが子孫に伝わります。異常な遺伝子が子孫に伝われば、家族に同じ病気が発症することになりますが、子孫が発病する可能性は病気の種類や遺伝の形式(遺伝の伝わり方)によって異なります。

 遺伝性の病気で遺伝子に何が起こっているかは病気によってさまざまで、複雑です。遺伝性の脊髄小脳変性症では、DNAの塩基(A、G、C、Tの4種類)という部分の3つずつの反復が異常に増えたもの(CAGCAGCAG……など)が病気の原因になります。3つずつの反復という意味で、これらはトリプレット・リピート病とも呼ばれています。

 遺伝子検査では、患者さんの血液からDNAを取り出し、特殊な方法で異常の有無を確認しますが、それが従来知られている遺伝子の異常と同じであれば、その病気の可能性が強くなります。

 実際、患者さんに検査を受けてもらうかどうかは非常に難しい問題です。選択は患者さんの自由で、承諾をいただかないかぎり医師が検査をすることはありません。

 検査で遺伝性の病気と確認された場合、患者さんによっては“知らないほうがよかった”と感じることがあるかもしれません。患者さんには“知らなくてよい権利”、“知りたくない権利”というものがあります。家族の考えもあるでしょうが、家族に相談しにくい問題でもあります。

 一方、検査をして自分の病気を知りたいと考える人もいるでしょう。また子どもが同じ病気になる可能性がある場合、そのカップルには正しい情報を提供すべきです。

 いずれにしても主治医とよく相談し、慎重に検討してください。

(横浜市立大学医学部神経内科学 戸田宏幸)

(横浜市立大学医学部長・神経内科学教授 黒岩義之)