脳・神経・筋の病気

プリオン病

分類:脳・神経・筋の病気

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 プリオン病とは、正常型プリオン蛋白が感染型プリオン蛋白に変換することにより、中枢神経系が選択的に冒される病気です。発症の原因や機序(仕組み)が明らかになっておらず、有効な治療法が見つかっていない現時点では、治療できない致死性の病気になっています。

 ヒトでは、喰人儀式によって伝わったクルー病、孤発性の発症が多いクロイツフェルト・ヤコブ病、家族性に発症するゲルストマン・ストレスラー・シェインカー症候群、家族性致死性不眠症などがあります。

 また、医原性プリオン病や狂牛病は大きな社会的問題として注目を集めています。医原性プリオン病は、角膜移植、深部脳波電極の使用、脳硬膜移植、ヒトの死体から抽出した下垂体ホルモン製剤の投与などの医療行為によって伝染しました。狂牛病は英国でヒツジの骨、内臓を用いた濃厚飼料を通じて、ヒツジのプリオン病(スクレイピー感染因子)がウシに伝染しました。

 さらに、狂牛病のウシからヒトへ伝染した可能性が高いのが変異型クロイツフェルト・ヤコブ病です。その特徴は、発症年齢が若い、生存期間が長い、不安・抑うつ・人格変化・異常行動などの精神症状が現れる、感覚障害の頻度が高いなどです。脳波で周期性同期性放電は認められず、脳のMRIで両側視床枕に対称性の病巣がみられます。小脳失調症状、認知症が進行し、延命処置を施さなければ発症から1年で死亡します。

(久留米大学医学部呼吸器・神経・膠原病内科部門准教授 綾部光芳)