脳・神経・筋の病気

脳卒中リハビリテーション

分類:脳・神経・筋の病気

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1.急性期

 脳卒中を発症すると救急病院に搬送されますが、できるだけすぐにリハビリテーション訓練(リハ訓練)を始めることがすすめられます。急性期(発症から数日〜数週間)にベッドに寝たきりでいると、下肢の筋力が弱くなり、関節が固くなり、体力も気力も衰えて、いわゆる廃用(使わない機能が衰えること)の状態になります。入院したその日あるいは翌日からリハ訓練を開始しましょう。

 意識が障害されていたり自分で体を動かすことができない場合は、床ずれ(褥瘡)を生じやすいので、体位交換を行うか、体圧を分散するマットレスを使用します。

 訓練ではまず、療法士は関節が固くならないようにベッド上で上下肢の関節を動かします。この訓練は患者さんには負担がないので、発症当日から実施することができます。患者さんの意識が清明で血圧が安定していれば、療法士の徒手的な抵抗に逆らって肘や膝の曲げ伸ばしをして、筋力を維持する訓練を行います。麻痺側の上下肢が自分では動かせない場合は療法士が介助をしながら行います。

 意識がある程度はっきりしていて麻痺の進行がなく危険な病態でなければ、ベッドの端に座る訓練、さらに可能であればベッドサイドで立つ訓練を行います。ラクナ梗塞など麻痺が軽い患者さんではその日から、中等度以上の場合でも麻痺が進行しなければ、発症後2〜3日以内に座位訓練は可能になります。血圧や心拍数など全身状態に注意しながら、なるべく早く座位・立位訓練を開始するほうがより短期間でよい状態になります。次に、ベッドから車椅子へ、車椅子からトイレの便器へ、およびその逆方向への乗り移り訓練を行います。移乗ができれば病棟生活もより快適になり、自分の力で訓練室に出かけてリハ訓練が実施できます。

2.回復期

 急性期治療が終了すれば、リハ訓練専用施設である回復期リハビリテーション病棟に転床して、日常生活訓練、歩行訓練、言語訓練などを集中的に行います。麻痺側あるいは健康な側の手を用いて、自分で洗面、食事、着替え、入浴、トイレなどの身の回りの動作ができるように訓練を行い、杖、短下肢装具あるいは長下肢装具を用いた歩行訓練を実施します。

 食事や飲水でむせる場合は、のどを動かす訓練、飲み込む訓練を行います。一般に液体にはとろみを付けると誤嚥しにくくなります。言葉がわからないまたは言えない失語症、発話が不明瞭な構音障害に対しては、言語聴覚士が言語訓練を行います。

 訓練によって機能は改善しますが麻痺は残ることが多いので、自宅での生活が快適にできるように風呂やトイレに手すりを取り付け、段差をなくす改修をします。

 職場復帰を目指す場合は、障害内容を把握したうえで必要な指導や調整を行います。

3.維持期

 多くの患者さんは維持期を、自宅で生活します。麻痺の回復は期待できませんが、障害があっても活動的に過ごし、上手に機能を維持することが大切です。身の回りのことはできる限り自分で行うようにし、適度な散歩や手足のストレッチを行います。通院訓練やデイケア、デイサービスを利用する方法もあります。障害をなくすことが目標ではなく、生活を楽しむことが大切です。

(産業医科大学リハビリテーション医学教授 蜂須賀研二)