呼吸器の病気

かぜの合併症

分類:呼吸器の病気

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 かぜは万病の元といわれます。これは、初発症状がかぜの症状であっても、その背後に肺がんなどの重大な病気が隠れていたり、本当のかぜであってもかぜだけで終わらずに他の重大な病気を合併して重症になったりすることをいっています。広い意味でのかぜの合併症には前者(実際は重大な病気が隠れている場合)も含まれますが、狭い意味の本当のかぜの合併症は後者(かぜから他の重大な病気に進む場合)を指しています。

 かぜの合併症で多いのは、かぜの炎症が声帯から下へ波及して起こる気管支炎ですが、気管支炎だけではあまり重くはなりません。炎症がさらに肺に及ぶと肺炎になりますが、慢性の肺や心臓の病気をもっている人や高齢者、糖尿病や腎臓病の患者さん、妊婦や乳幼児などでは、肺炎がより重症になって生命に危険が及ぶ場合があります。

 かぜのなかでもインフルエンザやRSウイルス感染症は重症になる確率が高く、さらに心不全(血液を全身に送り出す心臓の力が弱くなって心臓と肺に血液がたまり、呼吸困難や全身のむくみが現れる)を合併すると生命に危険が及ぶので、注意が必要です。その典型は2003年に中国から世界中に広がったSARS(重症急性呼吸器症候群)であり、高齢者ほど肺炎と心不全を合併して死亡率が高くなったことが報告されています。

 A群溶連菌によるかぜでは扁桃腺や咽頭(のど)の炎症が多いのですが、ペニシリンなどの抗生剤できちんと治療をしないと、後日、腎臓病を併発することがあります。そのほかにもリウマチ熱から心臓病(とくに弁膜症)になったり、関節炎になったりします。一生の病気になる可能性が高いわけですから、たとえかぜといえども軽視せず、医師の指示を守って初期治療をきちんと受ける必要があります。

(東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門教授 渡辺 彰)