循環器の病気
先天性心臓病の子どもの予防接種
分類:循環器の病気
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一般に、先天性心疾患であるから予防接種をすることができないと考えるのが正しくありません。むしろ心臓と肺に負担がかかっていて、原疾患にかかる負担に加えて感染症に罹患した場合の負担が重症化することを考慮すれば、先天性心疾患のない子どもにも増して、感染症に罹患することを予防したり、症状を軽くしてあげる必要性があるといえるでしょう。
とくに先天性心疾患と関係して、免疫力(感染に対する体の抵抗力)にいくらか影響がある疾患が知られています。
まず無脾症候群ですが、この症候群では脾臓がないことと関係して、免疫力が低いことが指摘されており、とくに肺炎球菌感染症で死亡する子どもがいることが報告されています。最近では、無脾症候群の子どももフォンタン手術を受けて、チアノーゼが消失し、一見ほとんど普通の子どもと同じような生活ができるようになっている例も増えていますが、それだけに予防接種の重要性が注目されてきています。
肺炎球菌に対する予防接種は、現在日本で可能なものとしてはニューモバックスがありますが、これは2歳未満の子どもに対しては禁忌とされています。では2歳未満の子どもの予防はどうすればいいかというと、現在のところ日本で許可されている予防接種はないのが実状です。小児循環器の医師が中心になって、2歳未満の子どもにも使える予防接種の認可を厚生労働省にはたらきかけているところです。
もうひとつの疾患は「22q 11欠失症候群」です。「CATCH22症候群」と呼んだ時期もありましたが、現在では「22q 11欠失症候群」と呼びます。ファロー四徴症や大動脈弓離断症候群、総動脈幹症などの一部が本症候群に含まれることから、心臓病と関係の深い症候群といえます。
22q 11欠失症候群の一部には、生まれつき胸腺のないディジョージ症候群が含まれています。ディジョージ症候群では、胸腺で形成されるT細胞が受けもつ細胞性免疫が低下しています。ディジョージ症候群の子どもで、細胞性免疫が完全欠損している場合には、原則として生ワクチンの接種は禁忌です。完全欠損している場合、生ワクチンを接種すると、実際に発症してしまうことがあるからです。しかし、実際には細胞性免疫の完全欠損の場合は少なく、いくらかを有していることが普通です。主治医に相談して、どの程度の細胞性免疫を有しているかを検査してもらい、それによって生ワクチン接種の可否を判断してもらってください。
22q 11欠失症候群のすべての患者さんに発症するわけではないので過剰に心配する必要はありませんが、頻繁に滲出性中耳炎や膀胱炎などを繰り返している患者さんの場合には、ディジョージ症候群と22q 11欠失症候群がオーバーラップしている疑いがあるので、主治医に相談のうえ、血液検査で細胞性免疫を調べてもらうことをすすめます。