循環器の病気

人工心臓

分類:循環器の病気

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 心臓のはたらきを補助する人工心臓が実用化しています。急性心筋梗塞などで起こる心原性ショックの時に、一時的に使用するポンプには大動脈内バルーンポンプ(IABP)、経皮的心肺補助(PCPS)があります。いずれも数日から1〜2週間、心臓が立ち直るまで使用します。

 より長期的に使用する人工心臓も進歩しました。日本では、東洋紡型といわれる補助心臓が保険適用となっています。通常、左心室から脱血し、体表に設置したポンプで拍出して大動脈に送血します。非常に強力なポンプですが、体外に設置する駆動装置が大きいため、入院中しか使用ができません。装置自体の信頼性は高いものの、ポンプ内に血栓を作ることがあり、抗凝固療法が必要です。脳梗塞や脳出血、感染症といった合併症が問題です。原則として心臓移植までの橋渡しに使われますが、2から3年にわたって使用することも珍しくありません。

 より小型で体内に設置するポンプと患者さん自身が運搬可能な駆動装置からなる、第3世代植え込み型人工心臓も実用化しています。自宅に戻り、外来通院することが可能です。抗血栓性も大きく改良されています。いくつかの機種は欧米では実用化していますが、日本では治験の段階でまだ保険に適用されたものはありません。

(東京医科歯科大学大学院循環制御内科学教授 磯部光章)