循環器の病気

バイパス手術後の生活

分類:循環器の病気

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 近年、患者さんに負担の少ない手術法(心拍動下手術、小切開手術など)の進歩、術後の痛みの管理やリハビリテーションの発展などにより、冠動脈バイパス手術後の早期退院が可能となりました。一般的に術後7〜10日前後で退院できる施設が多いようです。

 手術後に食事、歩行、入浴などを徐々に再開し、退院時には発症前とほぼ同様の日常生活が可能です。しかし、術後に心筋の障害や負荷が完全に改善しきれていなかったり、不整脈を認める患者さんも時にいます。また、少なからず全身の体力も低下しているため、退院後も引き続きリハビリテーションを継続していく必要があります。

 そこで、入院中にどの程度の運動に耐えうるのか評価し、退院後に行う理想的な運動量をプログラムに組み込んだ「運動処方」を受けます。退院後は、その運動を1回約30〜40分、週に3〜5回程度行います。運動の種類としては、歩行などの有酸素運動が推奨されています。

 極端に気温の高いまたは低い時間帯、食事直後を避け、家の周辺、通勤時、買い物の時など無理なく取り入れていくことが重要です。息切れ、胸痛、動悸などの症状が現れた時には運動をすみやかに中止し、病院に相談する必要があります。

 そのほか、術後に問題になってくるのは手術創の痛みです。患者さんによっては半年ほど痛みが残りますが、痛み止め薬などを使って徐々に改善してくることが多いようです。胸骨正中切開をした患者さんは、まれに胸骨が解離してくることがあり、半年間くらいは上体をひねる運動や重いものを持ち上げる運動は避けます。

 手術後も定期的な外来受診が重要です。動脈硬化は少しずつ進行していくものなので、危険因子である生活習慣病を引き続き治療していきます。

 術後5年を過ぎるとバイパスが細くなったり、詰まってしまうこともあるので、予防的に坑血小板薬を服用し、定期的にその微候がないかチェックしていく必要があります。

(順天堂大学医学部循環器内科非常勤助教 木下良子)