循環器の病気

冠動脈危険因子

分類:循環器の病気

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 近年、食生活の欧米化、自家用車・電化製品の普及などに伴って、日本でも肥満、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病が増加し、狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患の罹患率が上昇してきました。

 米国ではすでに虚血性心疾患の予防ガイドラインがあり、成果をあげていますが、日本でも2001年に日本循環器学会がより日本人の特徴に合わせた「虚血性心疾患の一次予防ガイドライン」を発表しました。ガイドラインでは危険因子として、以下のものをあげています。

①加齢:45歳以上の男性、55歳以上の女性あるいは43歳未満で閉経し、ホルモン補充療法を受けていない女性

②冠動脈疾患の家族歴

③喫煙習慣

④肥満:BMI〈体重㎏÷(身長mの2乗)〉が25以上、かつウエスト周囲径が男性で85㎝以上、女性で90㎝以上

⑤高血圧(収縮期血圧140㎜Hg以上、あるいは拡張期血圧90㎜Hg以上)

⑥耐糖能異常:糖尿病または境界型糖尿病

⑦高コレステロール血症:総コレステロール220㎎/dl以上、あるいはLDL(善玉)コレステロール140㎎/dl以下

⑧高トリグリセリド(中性脂肪)血症:150㎎/dl以上

⑨低HDL(悪玉)コレステロール血症:40㎎/dl未満

⑩メタボリックシンドロームは、診断基準検討委員会に従い、内臓肥満蓄積(ウエスト周囲径が男性で85㎝、女性で90㎝以上)を必須にして、(a)高トリグリセリド血症150㎎/dl以上かつ/または低HDLコレステロール血症(40㎎/dl未満)、(b)収縮期血圧130㎜Hgかつ/または拡張期血圧85㎜Hg以上、(c)空腹時高血糖110㎎/dl、うち2項目以上をもつものとする

⑪精神的・肉体的ストレス

 年齢・性別など避けられない危険因子もありますが、ほとんどのものが生活習慣(食事・喫煙・運動など)の改善、薬物療法により回避できます。

 ガイドラインでは、カロリー過多、脂肪(とくに肉類・卵)のとりすぎ(総カロリーの20〜25%が望ましい)に注意し、減塩(1日10g未満)、食物繊維・ビタミン・ミネラルをバランスよくとることを勧告しています。また、適度な運動を30分以上・週3〜4回行うこと、受動喫煙を含めた禁煙が推奨されています。ストレスへの対応については、作業量を工夫し、長時間労働を避け、休日・休息を確保することが大切です。

 健康診断を定期的に行い、生活習慣病を早期に発見し、適切な治療を受けることが重要です。

(順天堂大学医学部循環器内科教授 代田浩之)

(順天堂大学医学部循環器内科非常勤助教 木下良子)