こころの病気

リストカット

分類:こころの病気

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 リストカット(手首自傷)は、主に10代から20代の女性を中心に急増しつつある自傷行為のひとつです。

 こうした自傷行為の多くは、自殺を直接の目的とするとは限りません。痛みを感じたり血を見たりすることで「生きている実感」を感じることが目的のひとつです。不安や緊張の「ガス抜き」としてなされる場合もあります。

 増加の背景には、若者たちの間に広がる「生きづらさ」「生きる意味を実感できない」「何をしても空しい」といった空虚感があると思われます。また、意識や記憶が飛んだ「解離」状態で、無意識に自傷をしてしまう場合や、境界性人格障害といった精神障害が背景にある場合も少なくありません。

 すぐに自殺に結びつくという類の症状ではありませんが、自殺のサインのひとつとして慎重な対応をするべきです。また、リストカットに限らず、自傷行為には習慣性もあります。何らかの精神障害による場合はその治療が必要となりますが、周囲が「狂言」扱いせず、親身に「そういうことはしてほしくない」というメッセージを伝え続けることが大切です。

(爽風会佐々木病院診療部長 斎藤 環)