こころの病気

「自閉症」という言葉

分類:こころの病気

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 「自閉症」という概念は、1943年にレオ・カナーによって「早期幼児自閉症」として報告されましたが、その後、認知・感覚機能に関する研究とともに、対人関係のあり方に関する研究が進んだことによって、自閉症の理解は飛躍的に進歩してきました。「早期幼児自閉症」は簡略化されて「自閉症」といわれたり、「自閉性障害」などと使われるようになり、さらには「高機能自閉症」「低機能自閉症」という使い方も始まっています。

 今日的には、これらをまとめて「自閉症スペクトラム」または「自閉症連続体」といい、「低機能自閉症」(一般的にはIQ70未満)をカナー症候群といい、「高機能自閉症」(一般的にはIQ70以上)をアスペルガー症候群といいます。

 大きなくくりからいって広汎性発達障害の一種であることから、ADHDや学習障害とも近縁です。したがって「高機能自閉症」といわれるなかには、ADHDや学習障害のある人もいます。

 「低機能自閉症」では、前述のようにIQ70未満の人が一般的なので、多くは知的障害を併せもっています。「低機能自閉症」では、回転するものに興味をもつ人が多く、また手を引っぱってそこにつれていこうとする「クレーン現象」を示すことが多くなります。また、今日的にいえば「低機能自閉症」であるカナー症候群のなかには、高い記憶力をもつ人もあり、カレンダーを見ることなく曜日を的中させるなど、「サバン症候群」と呼ばれる能力をもつ人もいます。

 2001年5月にWHOが採択した国際生活機能分類(ICF)は、障害を疾病面からとらえるだけでなく生活面からとらえるものであり、こうした障害理解と障害者理解が広がることによって自閉症理解はさらに発展を遂げることは確実であり、これによって自閉症への教育的あるいは福祉的関わりも大きく変わるはずです。

 これまでは、教育的あるいは福祉的なはたらきかけとしては、個人的なはたらきかけとしての行動療法が行われてきたほか、TEACCHの手法を取り入れるところも多かったのですが、このような障害理解と障害者理解に基づいた「自閉症」の新たな理解を踏まえ、これまで以上に「自閉症」のノーマライゼーションはさらに進むものと考えられます。

(中部学院大学大学院人間福祉学研究科教授 吉川武彦)