こころの病気

悪性症候群

分類:こころの病気

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 悪性症候群は、突然に高熱を発して筋肉が硬直し、意識障害を起こすこともある、時に生命の危機にさらされる抗精神病薬の副作用です。熱は40℃以上に達し、解熱薬が効きません。体全体をこわばらせ、発汗がひどく、意識障害のために口から栄養が摂れなくなります。腎臓や肝臓の障害を引き起こすこともあります。

 治療は、いったん精神科治療を中断しても、内科や集中治療室の力を借りながら、全身管理を行いつつ実施されます。

 本症のリスクファクター(危険因子)としては、①患者さんが精神症状のために、たいへん緊張し興奮した状態か、昏迷状態という緊張しながらほとんど動かない状態にある。②興奮・緊張や昏迷のために、水分が摂れず脱水気味である。また、運動量の割に食事も摂れていないため体が消耗している。③注射を用いて大量に投与されるなど、かなり急速に高濃度の抗精神病薬が体内に投与されている、などがあげられます。

 予防にあたっては、とくに急性期に脱水や栄養障害に配慮することが欠かせません。加えて、緊張がなるべくほぐれるような環境づくり、接し方の工夫にも意味があります。精神疾患といえども体を巻き込んでの病態であり、体の状態をみることの大切さを、この副作用は教えています。

(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会復帰研究部長 伊藤順一郎)