家庭の医学 大全科

健診・人間ドック 検査結果のくわしい解説とQ&A

消化管の検査

消化管の異常や異変を調べる検査
便潜血検査、上部消化管X線(レントゲン)撮影、上部消化管内視鏡検査、下部消化管X線(レントゲン)撮影、下部消化管内視鏡検査

消化管からの出血の有無を調べる検査 便潜血検査、上部消化管X線(レントゲン)撮影、上部消化管内視鏡検査、下部消化管X線(レントゲン)撮影、下部消化管内視鏡検査

便潜血検査

便潜血検査の概要

消化管から出血があると便に血が混じりますが、微量な出血だと肉眼では気づきにくいものです。そういう微量な出血があるかどうかを調べる検査です。自宅で便を採取して検体を検査機関に提出します。

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便潜血検査の判定値

日本人間ドック学会の判定値
便潜血検査の判定値 日本人間ドック学会の判定値
便潜血 2日法
異常なし:1日目・2日目 (−)陰性
要治療・要精検:1日目・2日目 1日でも(+)陽性

便潜血検査に関する主な病気

口から肛門に至る消化管から出血
主に大腸疾患肛門疾患
上部消化管出血
食道静脈瘤
食道がん
胃・十二指腸潰瘍
胃がん
下部消化管出血
大腸がん
大腸ポリープ
潰瘍性大腸炎
クローン病

肉眼では見えない微量な出血で大腸がんを発見します

消化管に出血があると、便にその血液が混ざります。出血が多量であれば便の色がいつもと違うため、自分で気づくこともありますが、微量の出血はわかりません。便を採取して調べることで、消化管からの微量な出血も検出できるのがこの検査です。特に、大腸がんのスクリーニング(病気の有無をふり分ける)に有用とされています。1日法で行われることもありますが、2日法が一般的で、早期がんでは50%、進行がんでは90%が発見できるといわれています。

上部消化管X線(レントゲン)撮影

上部消化管X線撮影の概要

バリウムを用いてX線(レントゲン)を照射、画像を得て、胃や食道に異常がないかを調べる検査です。

上部消化管X線撮影の基準

  • 異常所見なし

上部消化管X線撮影に関する主な病気

上部消化管(食道・胃・十二指腸など)
食道裂孔ヘルニア
食道がん
胃炎
胃・十二指腸潰瘍
胃ポリープ
胃がん

バリウムを胃壁に付着させてX線撮影を行います

上部消化管X線撮影では、胃を膨らませる発泡剤を飲んだあと、バリウムを飲んで食道、胃、十二指腸の壁に付着させ、体の向きを変えながらX線撮影で内部を写し出します。バリウムのたまり具合や付着の様子から、内壁表面の凸凹などを観察して、腫瘍やポリープ、潰瘍などを発見します。

検査後、バリウムを排泄するために下剤をのみますが、便秘にならないようにするため、水分を多めにとるようにましょう。

上部消化管内視鏡検査

上部消化管内視鏡検査の概要

管の先端にレンズが付いた内視鏡を、口や鼻から挿入し、食道や胃、十二指腸の内部を観察します。

上部消化管内視鏡検査の基準

  • 異常所見なし

上部消化管内視鏡検査に関する主な病気

内視鏡で食道、胃、十二指腸の内部を観察します

上部消化管内視鏡検査とは、いわゆる胃カメラでの検査のことです。内視鏡で食道から胃、十二指腸まで調べます。内視鏡では、潰瘍からの出血や粘膜のただれ、胃がんなどが確認できます。挿入部の先端に針などがついているタイプでは、検査と同時に組織を採取して悪性のものかどうかを調べることもできます。

下部消化管X線(レントゲン)撮影

下部消化管X線撮影の概要

バリウムを肛門から注入しX線(レントゲン)を照射、画像を得て、大腸に異常がないかを調べる検査です。

下部消化管X線撮影の基準

  • 異常所見なし

下部消化管X線撮影に関する主な病気

下部消化管(大腸:直腸・結腸など)
大腸憩室
潰瘍性大腸炎
大腸ポリープ
腸結核
クローン病
大腸がん

バリウムを肛門から注入し大腸のX線撮影を行います

下部消化管X線撮影は、注腸X線検査、大腸X線造影検査等とも呼ばれます。あらかじめ下剤などで大腸の中をきれいにしてから、肛門に麻酔入りのゼリーを塗って管を挿入し、その管からバリウムを注入し、さらに空気を入れてX線撮影を行います。痛みはありません。大腸(直腸・結腸)の状態を調べます。この検査は1回に3時間ほどかかり、異常があった場合、改めて内視鏡検査が必要になるため、一般に検診では行われていません。

下部消化管内視鏡検査

下部消化管内視鏡検査の概要

管の先端にレンズが付いた内視鏡を肛門から挿入して、直腸から盲腸までの大腸全体を観察します。

下部消化管内視鏡検査の基準

  • 異常所見なし

下部消化管内視鏡検査に関する主な病気

内視鏡で大腸の内部を観察します

あらかじめ下剤などで大腸の中をきれいにしてから、肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸までの大腸全体を調べます。大腸がんのほか、大腸のポリープや潰瘍の有無などがわかります。挿入部の先端に針などがついているタイプでは、検査と同時に組織を採取して悪性のものかどうかを調べることもできます。便潜血反応検査で陽性になったとき、出血の原因を調べるために行われることの多い検査です。

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よくある質問Q&A

バリウム検査と内視鏡検査はどう違うの?
それぞれ違った特徴がある
バリウム検査では体の向きを変えながら食道・胃の動きをリアルタイムで観察することができます。内視鏡では診断が不得意なスキルス胃がんの発見に秀でています。スキルス胃がんは胃の壁を厚くさせながら広がっていくのが特徴です。
上部消化管の内視鏡検査は胃の粘膜を直接見ることができるので、小さながんを発見できます。同時に組織の一部を採取して細胞診をし、確定診断することもできるのが特徴です。
監修者プロフィール
和田高士 医師
監修
和田高士(わだたかし) 医師
東京慈恵会医科大学大学院医学研究科健康科学 教授
1981年東京慈恵会医科大学卒業、2008年東京慈恵会医科大学 総合健診・予防医学センター教授を経て、現、東京慈恵会医科大学大学院医学研究科健康科学教授。日本肥満学会評議員、日本動脈硬化学会評議員、日本臨床検査医学会管理医、肥満症診療ガイドラインの執筆も担当。日本人間ドック学会では、理事を務める。